フィラリア・ノミ・マダニ|逗子の動物病院は「フリッパー動物病院」へ|夜間・救急対応

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フィラリア・ノミ・マダニ

蚊によって媒介される寄生虫

犬糸状虫(フィラリア)というのは蚊によって媒介される寄生虫です。成虫は肺動脈、右心系、大静脈などの心臓周辺に寄生するため、肺高血圧、うっ血性心不全、後大静脈症候群などの循環器障害を起こし、ときに致命的なダメージを宿主に及ぼします。また、それに続発して全身各所に様々な異常を起こすこともあります。重篤度によっては治療自体がリスキーなことも多く、治療したとしても身体各所の障害が残ってしまうこともあるため、感染が成立する前にしっかりと対策を打つ必要があります。

幸いなことにこの寄生虫には寄生を成立させないための予防薬がいくつかありますので、それらを正しく使用することでフィラリアを100%近くまで阻止することが可能です。計画的に予防して健康な生活を享受させてあげましょう!

犬のフィラリア症

フィラリアの生活環

フィラリアの予防を考えるときに重要ですので、最初にフィラリアのライフサイクルについて概説します。

ミクロフィラリア

犬の心臓に雌雄の成虫が揃うとメスはミクロフィラリア(L1と表現します)という子虫を産みます。ミクロフィラリアは血液を循環しているため、蚊がこれらの犬から吸血する際に子虫を取り込みます。一定の温度条件の下(15℃以上)で2週間から2.5週間かけて蚊の体内で2度の脱皮を行い、この過程を経て初めてミクロフィラリアは感染子虫(L3)といわれる幼虫になります。この段階で感染の準備が整う訳です。
※このようにフィラリアの寄生が成立するためには蚊の存在が必須であり、輸血による感染や胎盤を介した親子感染で入った子虫は決して成虫にはなれません。

蚊の体内で待機

感染の準備が整った子虫は蚊の体内で待機します。そして次の吸血の際に新しい宿主に取り込まれます。感染後10日前後で一度脱皮し(L4)、60日前後で再度脱皮します(L5)。感染100日前後で血管系に侵入して行き、5ヶ月位までは未成熟虫のほとんどが肺動脈内に存在します。そしてその後体長が伸びて右心室へ移動し、成虫となります。

感染・産出

感染後、早いもので5ヶ月、通常は6ヶ月以上(7~8ヶ月)経過して前述のミクロフィラリアを産出します。そして1に戻ります。

フィラリア症に罹ってしまった場合の症状と治療

毎年きちんと予防前の検査を受けていて、たまたま予防の失宜や失念によりフィラリアが陽性で検出される場合、それらの犬の多くが無症状なままでしょう。この場合はショック予防の薬を適宜使用しつつ、適切な予防薬を通年投与するという長期治療でフィラリアの成虫を徐々に弱らせることで対処できます(汎用されている予防薬でも、種類によっては全く効果がないので注意が必要です)
症状のある犬では、軽症ではときおりの発咳、運動時疲労、活動低下などが見られます。進行すると咳の持続、呼吸数の増加、呼吸困難などを起こすこともあります。また右心不全によって腹水が貯まって腹囲が拡大したり、運動不耐性、失神が確認されることもあるでしょう。症状のある感染犬の治療は慎重に選択されます。重篤な症状があるものでは安静や対症療法によって症状を緩和させてから成虫駆除を行うか否かを決定します。

もっとも危機的な症状は大量の虫体によって心臓への血流が阻害されたときに起こります。食欲不振や虚弱、削痩、呼吸困難、粘膜の蒼白などが事前に観察されているケースもありますが、無症状だったものが突然の虚脱に陥ることもあります。これはショック様の病態で、大静脈症候群といいます。典型例では血色素尿、心音の変化(三尖弁の逆流音、心音の分裂)、頚静脈の怒張や拍動などが確認されます。大静脈症候群に陥ったものに対する唯一の効果的な治療は外科的な虫体の摘出です。放置すれば24~72時間以内にほぼ確実に死亡しますが、虫体の摘出を行えば約50%程度(データによってはそれ以上)は生存できる可能性が残されます。

フィラリアの予防方法

フィラリアの場合、予防と行ってもワクチネーションを行う訳ではありません。蚊に刺されて体内に入ってきた子虫を月に1度定期的に駆除し、感染を成立させないことで予防を行います。このために使用されるのがフィラリア予防薬と呼ばれるものです。
現在国内では数種類のフィラリアの予防薬が入手できます。当院で主に使用しているのはイベルメクチンという薬剤を使用したチュアブルタイプの予防薬です。この薬剤はお肉のような食べやすい形態になっているため投与がしやすいことと、パモ酸ピランテルという薬剤が混合されているため回虫などの駆除も同時に行えるというメリットがあります。
その他にも錠剤タイプ、顆粒タイプ、スポットタイプの予防薬を用意していますので、ワンちゃんの嗜好性や性格などによって選択していただけます。

※コリー、シェルティーなどイベルメクチン系の薬剤に対して副反応が生じやすい犬種でも予防薬の濃度では通常問題ないと言われています(逆にどの薬剤でも高濃度になれば副作用は生じます…)。そのため通常は他の子と同じ薬を処方しておりますが、予防量で副反応が生じたことがあったり、ご心配な場合はご相談いただければ他の薬剤(モキシデクチン)を処方いたします。

※注射タイプの予防薬も流通しているのですが、個人的にあまり使い勝手が良くないと感じていることと(一度溶解してからの期限が長くないため、使い切る必要が生じ、そのため皆様のご意向に関係なくお勧めせざるを得なくなります。注射を使用しているところは大体そんな感じで勧めてくるのではないでしょうか…)、一年持続する薬剤が体内にずっと留まっているということに抵抗を感じるため、当院では使用していません。

フィラリアの検査

フィラリアが寄生しており、体内にミクロフィラリアが循環している状態で不用意に予防薬を投与するとショック様の症状が現れ、場合によっては死亡するケースもありますので、その年の予防開始の前に血液検査を行うことが推奨されています。前年の予防が確実に行われていたかを確認する意味でも重要です。当院では安全のため、毎年の予防開始の際に免疫診断キットによる成虫の確認と顕微鏡による子虫の検出の二通りの血液検査を行わせていただいてます。法的な問題もあり検査を行っていないワンちゃんに対する予防薬の処方は一切行えません。

過去に(勤務医時代の話ですが)、他院で検査なしの処方が行われたために重篤な副反応を示してしまい、救急で来院された患者さんを数例診たことがあります。中には既に手遅れの状態で来院されたこともあります。厳しいようですが、法的な問題だけでなく、わんちゃんの健康と安全のためですので予めご了承下さい。

ただし、ライフサイクルの項で説明しましたように、フィラリアは感染して成虫になってミクロフィラリアを産むまで最低でも5ヶ月、通常は6ヶ月以上かかりますので、それまではフィラリアの検査をしても意味がありません。よって生後5ヶ月経過していない子犬さんが初めて予防薬を使用する際には特に検査をせずに予防薬を処方させていただいております。

フィラリア予防薬の投与期間(およびその考察)

逗子周辺地域の推奨予防期間:5月から12月までの8ヶ月間(月に1度)

理由)
フィラリアの予防期間は地域により異なります。それはこの寄生虫が蚊に媒介される寄生虫であるため、1.まず蚊が存在すること、2.そしてフィラリアがその蚊の体内で感染力を持った子虫に成長するかどうかが重要な要素となり、これは気温に大きく影響されるためです。1と2を満たす期間を感染期間といい国際的に提唱されているHDU(heartworm development units)という単位を用いた方法によって推測することができます。
1日HDU=「1日の平均気温-14℃」で計算され(マイナスのときは0と判断します)、1月から毎日足して130を越えた時点で感染期間開始と考えます。また最近30日分を合計数値が130を切った時点で感染期間終了と推測できます。
これらを基に計算すると神奈川県の湘南~三浦地域の2006年の感染期間開始は概ね5月下旬(5/28前後)となります。また感染期間終了は概ね11月中旬(11/11前後)となります。ただし年によっては感染開始が5月の上旬に成立することもあり、最近では2004年などは5月に入ってすぐに感染期間開始となります。また終了時期も変動はあります。
フィラリア予防薬の種類による違いはありますが、どの予防薬も最も効果をもたらすのが前出の<フィラリアの生活環>の項で述べたL4子虫の段階であり、L3が体内に入って約10日でL4になり、約60日で次のL5になることを考えると、理論的には予防開始(最初の投薬)は感染期間開始から15日から50日の間、予防終了(最後の投薬)は感染期間終了から15日から50日の間と大まかに考えれば良いといえるでしょう。

ただし、HDUはあくまでも環境中の気温と、メスの蚊の生存期間(約30日とされます)中にフィラリアが感染子虫になれるかという相関から得られた理論的な指標であり、1.同一地域におけるより微小なエリアにおける気温変化、2.フィラリアの成長に対する湿度の影響、3.媒介者となるメスの蚊の種毎の生存期間の違い(30日以上生存する蚊は存在しないのかという問題)、などなど文献的に証明されていない潜在的パラメータは多く残っています。こうした不確定要素として働く潜在的なパラメーター考慮して、予防期間は上記期間の中である程度幅を取って考えた方が安全と言えます。

以上を踏まえて、逗子周辺地域では、最初の投薬を感染期間開始から15日経過した5月の中~下旬に開始し、最後の投薬を感染期間終了から30~50日ほど経過した12月の上~下旬の間で行えば完全な予防が行えるということになります。

※これらを全て口頭で説明するのは大変くどいですから(もちろん求められればしますが…)、診察においてはシンプルに「感染力を持つフィラリアをもつ蚊の出る時期から1ヶ月ずらして開始して1ヶ月ずらして終わりましょう」「フィラリア予防期間は5月から12月までの8ヶ月間でしましょう」などと簡単に説明していますが、実はその背景にはこういう理屈があるのです。理屈が分かればなるほどしっかり予防しなければという気がするのではないでしょうか?

猫のフィラリア症

意外に思われるかもしれませんが、猫にもフィラリアが寄生します。
ただし猫はフィラリアにとって固有の宿主ではないため感染率は犬の約5~20%といわれています。また成虫まで成長する虫も少なく、成虫になってからの寿命も2~3年と短いので、感染していたとしても猫体内の成虫は少ないでしょう。
しかし、例え1隻の成虫の寄生であっても、肺動脈や肺に対する影響から呼吸困難を起こしたり、虫体の死滅により血栓塞栓症を起こして死亡することもありますので注意が必要です。

猫のフィラリア症の症状

犬の様に典型的な循環器症状や呼吸器症状を示さない猫も多く、中には無症状なまま病気が進行して突然死したり、慢性的な嘔吐のみが症状として認められるためフィラリアの感染を疑われないで対処されてしまうこともあります。また虫が心臓以外に迷入してしまい神経症状をはじめとする様々な症状を示すことも考えられます。犬で起こる大静脈症候群(上述)は猫ではまれなのですが、多発地域では少数あるようです(ちなみに私はまだ見たことがありません)

確定診断が難しい猫のフィラリア症

猫のフィラリア症の確定診断は、犬の場合程は容易ではありません。ミクロフィラリアが血液に出る時期が無いか、あっても極めて短いため子虫の検査ではほとんど引っかかってきません。また成虫に至る例が少なく、あっても少数なため犬用の抗原検査キットにも反応しない場合が多く、決め手に欠きます。一部の検査センターでは猫のフィラリア検査を請け負ってもらえますが、やはり外注の検査ですので結果が出るのに時間を要するのが難点です(場合によっては数日かかります)。
(以前は猫用の免疫検査キットがあり、ある程度は使用に耐えるものだったと思われたのですが、諸々の事情により現在は販売されていません)
治療方法も残念ながらまだ確立していない状態です。

猫のフィラリア予防

このように症状もあいまいで診断が困難な割には、突発的かつ致死的な転帰をとることが多いため、あらかじめ感染しないようにフィラリアの予防をしておくことは非常に重要です。
猫でも専用に認可された内服薬があり、犬と同じ期間投薬することにより確実に予防できます。しかし、この薬が曲者で、非常に大きく飲ませ難い上に犬のチュアブル剤のように喜んで食べてくれるものではないのです。

そんな中、近年登場したのがレボリューションというスポット薬です。この薬はフロントラインのようにノミやダニの予防ができるのに加えてフィラリアの予防までできてしまうという優れもので、5月から12月までの予防期間内に毎月滴下することによってフィラリアを完全に防ぐことができます。またノミ・ダニ・フィラリア以外に猫回虫の駆除やミミダニの駆除もできてしまうという万能さを持っており、様々な局面で重宝します。
当院では猫のフィラリア予防には主にこのレボリューションを使用しています。

ノミ・マダニ

ノミ・ダニに刺されたら痒いだけではありません。命にかかわる感染症を運んできたり、そのほかにも怖い病気を発症させることがあります。
また、動物だけでなく、人間にも感染する病気も多く運んできます。
『駆除』することもできますが、噛まれたり刺されることを『予防』することが理想です。

ノミ

ノミは、体長2mm程のごくごく小さな昆虫ですが、その成虫には寄生性があり大変危険です。動物に対しては、ノミ刺傷やノミアレルギー性皮膚炎を引き起こし、瓜実条虫(うりざねちゅう)の媒介も行います。さらに、ヒトに対しても、ノミ刺咬症や猫ひっかき病などの大きな病気をもたらす場合があります。ノミは、ペットにとっても飼い主にとっても注意が必要な存在です。

目に見える成虫、つまり私達が普段「ノミ」と呼んでいるものは、実は全体の5%に過ぎないといわれています。つまり、残りの95%はカーペットや家具の下、ペットの寝具などに卵や繭の状態で潜んでいるのです。ノミは13℃の気温で活性化するため、暖房のきいた冬でも快適に過ごすことが可能です。さらに、雌の成虫は一日当たり平均25個もの卵を産み、約14日で卵は成虫にまで育ってしまいます。したがって、定期的にノミ駆除を行い、 ノミのライフサイクルを断ち切る必要があります。

マダニ

マダニもノミと同じくペットに対して寄生と吸血を行います。マダニは、宿主を一生のうちで2~3回変え、吸血後には体重が吸血前の200倍にもなるとされており、その状態のマダニは一回の産卵で3,000~4,000個もの卵を産みます。

マダニの引き起こす病気

ペットがマダニの寄生されると、貧血や皮膚病などをはじめ、命にかかわる感染症にかかるリスクがあります。また、ヒトを咬むことで、SFTSという命を落とす危険のある病気を感染させることもあります。SFTSは予防法や治療法は確立されておらず、大変危険な感染症です。マダニには十分な注意が必要でしょう。

マダニに咬まれないために

マダニは日本全国の草むらに生息しています。散歩の際には、草むらに注意するよう心掛けてください。また、マダニを駆除する薬は動物病院で購入することが出来ますので、身の周りの安全から確保していくようにしましょう。ペットの安全が、ご家族の安全にも繋がります。

マダニに咬まれているのを見つけたら

寄生した状態のマダニを無理に捕ることはしてはいけません。無理に捕ると、皮膚にくちばしを残したり、体液による病原体の伝播のリスクが高まります。マダニ専用のピンセットなどをお持ちでない場合、動物病院の受診をおすすめいたします。

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